タブーをゲームとして表現し、ユーザーに自分自身の問題として関わらせる方法『GIRL CODE』

この本にはいろんな見方があると思いますし、読み手の立場によっていろんな感想があると思います。

実際私も、「娘を持つ父」として読んだ時、女性とテクノロジーの関係性やそれを支援する仕組み、また月経タブーについて自分がいかに分かっていなかったか、そして女性を取り巻く課題について考えるきっかけになりました。

また、「あがり症」であったり、「積極的な発言ができない」という人間である自分として読んだ時には、グッと涙を堪えるほどに共感したり勇気づけられる場面がありました。

そして、「Make Everything Games」という活動を始めたいと奮い立たせてくれたのは、何よりこの本の主人公である二人の女性が「月経タブー」をテーマにして、決して自信満々にではなく恐れや挑戦をしながらゲームとして表現し、それを世界に広めていったという等身大のストーリでした。

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まずは彼女たちが開発した Tampon Run (タンポン・ラン)という月経タブーに挑んだゲームで私が書くべきことを書きたいと思います。(ゲームをプレイした結果、ユーザーである私が自分自身の問題としてそれを考えることが彼女たちが望むことだと思うので 😁)

🤫 月経タブーについて

本書を読んだ後、妻に月経タブーが彼女の周りでどのように捉えられているかを質問しました。

妻は40代ですが、おおむね彼女の若い頃と本書の状況は変わっていないようです(彼女の周りはですが)。

また、妻は若い頃に生理痛や出血量に悩みがありましたが、母親には相談できなかったそうです。少なくとも彼女の母親はそういう悩みがなかったようで理解が得られそうになかったとか。

今は、処方されたピルを服用しており、痛みは軽減されているようですが、若い頃にこの選択肢が取れていればという思いはあるようです。

ピルに関しては私も不勉強ですが、避妊目的だけでなく生理の症状を抑える効能があったり、そもそも晩産化が進む現代においては、生理の回数が以前よりも多すぎるため、それを調整するという意味合いもあるらしいです。 (出産期間があれば、その間は生理が止まる) 正しく利用すれば服用停止後の妊娠にも問題はないため、そこだけ聞くと積極的に利用すべきなのではとさえ思います。

(「ピル」という呼称は実際適切なんでしょうか、OC などとも呼ばれるようですが、もう少し用途に分けて適切な名前を付けても良さそうな気もします)

妻は、娘も同じような生理の症状が出た場合には積極的に服用を勧めたいと言っており、私も賛成できました。ここでこういう話し合いができたことは、女性から見ればレベルが低い内容かもしれませんが、個人的にとても良かったと思います。

一方で、現在の学校では生理用品がどのように扱われているのか、例えば保健室で常備されているのかなどや、生理痛に対しての対処方法の案内、また事例はあるようですが、男子学生への教育など不明な部分は多いです。娘の成長や環境を見ながら、調べたり考えたりしていければと思います。

👩🏽‍🤝‍👩🏼 等身大の二人のストーリー

主人公の二人は、決して特別な存在ではないと思います。厳しめの家庭に育ち、多くの活動に積極的なアンディと、あがり症だけれどエンジニアの兄を持ち多くの人に影響を与えたいと考えているソフィー。

どちらの環境も自分には既視感があって、そこで彼女たちが考えている悩みは自分にすごく刺さりました。

私は他人に助けを求めるのが苦手だった。助けを求めることで、自分が無力で役立たずなお馬鹿さんだと感じてしまうのだ。


その時わたしは、自分の長所について一度も考えたことが無かったことに気づいた。自分の悪いところばかり見つけてきて、そのせいでいつも自分は最悪だと思い込んでた。私は多分バカ。私はいくら憧れたって、実際にすごい存在にはなれないだろう。私は失敗する。こういう恐怖心のせいで、新たな試練と経験に挑戦すること、はっきりものをいうことから遠ざかっていた。他人に評価されることを、とても恐れていたのだ。でも実のところ、一番自分に手厳しいのは自分だった。


自分が作ったものは全部下手くそ、少なくとも誰かが作ったものより優れているということはないと思っていた。だから他人に見せたら、自分がその作品をいいと思ってると言っているようなものだし、他人が作品を気に入らなかった場合はさらに恥を書くことになる。

上記 3 つは、二人のそれぞれの言葉を一部引用しています。恥ずかしながら、今でも私は同じようなことを考えてしまいます。(もう 40 になったというのに) コンプレックスや自身の無さはなかなか消えてくれません。

彼女たちは、「Girls Who Code」という女の子のためのプログラミング教育の活動や、その後の多くの人との出会いの中で、少しずつ自分たちが変わっていくことを感じていきます。もちろん周りの人との出会いや言葉もありますが、結局は「自分」の考え方でもあるということを気づかせてくれます。

私は両親に対する判断を急ぎ過ぎてしまっていた。

これはアンディの言葉ですが、タンポン・ランというタブーに挑んだゲームを、厳しい両親たちがどう思うか、アンディは発表の当日まで何を作っているかを話さなかったのですが、それは批判的な意見を想像してしまっていたかもしれません。
でも、結果としては両親はとても気に入ってくれました。もちろん、これは結果論かもしれませんが、「相手に対する判断」を勝手に下して悩んでしまうというのは、今でも私はよくあります。

🛣️ 彼女たちのストーリーは続いている

この書籍は二人のサクセスストーリーではあるのですが、ミリオネアになったとか、起業して成功したとかそういう終わり方ではありません。
もちろんゲームを発表した結果、彼女達は一時的に有名になりましたが、それで華々しい進路を進むようなこともありません。

二人は、それぞれの道を進んでいますし、二人とも犠牲を払って成長や「すごい人」になることを決して望んでいるわけではありません。

そして、家族との関係や、自分とのコンプレックスの悩みを抱えたまま、でもそこから進んでいく決意で話は結ばれています。

もしかすると、今現在では少し成長した二人はまた壁にぶつかったりしているのかもしれませんが、きっと彼女たちらしく進んでいるのだと思うと、余計に私は勇気づけられるのです。

🕹️ 理解が進んでいない問題をゲームとして表現すること

二人のストーリーに感銘を受ける一方で、私はもう一つ Tampon Run というゲームのアイデア自体にとても衝撃を受けました。

Tampon Run はそもそもが議論を起こしたり、話すきっかけを作るために作られています。当然ながら、このゲーム自体にはビジネスの側面はありません。何しろ、単なる課題制作だったので。

仕事としてゲームを作るならば、当然収益が見込めるものでなければ始められないと思います。私もそう思っていました。

けれど、こういう問題に対しての議論を起こすきっかけになったり、そもそも問題に対する理解を深めるために「ゲーム」そのもの(ゲームっぽい何かではない!)を使うというアイデアは、昔からそういうアイデアはあったと思いますが、現在、いろんなものが複雑になっている状況でとても意義があるのではないかと感じました。

ゲームを作るハードルは以前に比べるととても下がっていますし、何より私はゲームを作りたい人間です。
そして、ゲームだけでなく、社会的にも意義があるものが作りたいという思いもありました。その二つは相反するものかと思っていたのですが、ここにその交差点があったということに気づけました。

ゲーミフィケーション

ゲームとして表現するというと、「ゲーミフィケーション」がすでにある用語としてある気がします。

でも、どこかで思っていることがありました。「ゲームっぽくじゃなく、ゲームをやりたいんだ」。

仕事や教育の場、それは家で子供に対してでもですが、ゲームっぽい手法を入れると、人によっては白けたり、不真面目に感じたりと、まずはそれを実施する前段が必要になってくる場合があります。

なので、目的のためにゲームをするのではなく、ゲームをやっていれば目的が達成されるのが一番いいと思うわけです。

もちろん、企業がやっているそれは、自社のファンを作ったり、購買意欲を増進させたりと、ゲームをユーザーがやってくれれば目的が達成されるというものですが、それだけではなくて、そのユーザーや社会に意義があるものということですが、書いていても何が違うのかはっきりしませんね 😅

情熱を傾けて追い求める力

これは書籍内に登場する ローラ・アリラガ=アンドリーセン の「情熱を傾けられるものを見つけ、それをただ追いかけるだけでなく、実践せよ」という言葉から来ています。ソフィーが、月経タブーに挑むゲームを作ることを決めた日、そこに載せるメッセージの文章を時間を忘れて書き上げた時に「それを理解している」とありますが、それまでの彼女はそうではありませんでした。

これまでリアルでクールで革新的なものを作ろうとして抱えていたアイデアは、大半がアイデアのまま終わった。「こんなのがあったら面白くないかな?」「こんなものを本当に使えたらな」というレベルの発想はひっきりなしに思いつく。ほとんどの人がそうだと思う。だけど、次の段階が訪れる。こんなふうに自分に言い聞かせてしまうのだ。自分のアイデアを実現させる能力がないとか、難しすぎるとか、時間がないとか、どこから始めたらいいかわからないとか。それでさっさとそのアイデアを忘れ、見切りをつける。自分のアイデアには大っぴらに取り組むような価値はないと決めつけ、アイデアを却下することを繰り返していた。

いつもこのように考えていたソフィー(私も同じ)が、アイデアを実現させるために情熱を行動に移した場面は、この書籍を読んでいる中でも特にグッとくる場面でした。

もし、年齢や性別は関係なく、彼女達と同じような気持ちや悩みを持っているならば、とてもパワーが湧いてくる一冊だと思います。